この薄いシリーズは、書店や図書館でよく見かけてはいた。
巻末のリストを見ると、全100巻で世界史上の有名人をカバーしている。
内容的には特にどうと言うこともない。
大体知ってることが多いので。
この皇帝は、中世キリスト教時代には当然悪罵の限りを尽くされたが、近世以降は、同時代人でタキトゥスに次ぐラテン語史家とされるアンミアヌス・マルケリヌスの同情的叙述が見直され、好意的に語られるようにもなった。
その代表が、ギボン『ローマ帝国衰亡史』であり、日本では辻邦生『背教者ユリアヌス』がある。
一方現代アメリカの歴史家バワーソックのように、批判的な評価を示す研究者もいる。
私自身は初めてギボン『衰亡史』を読んだ時の印象が余りに強烈で、この皇帝には強い好意を持つようになった。
とは言え、異教復興という政策には無理があったと思われるのも事実である。
ローマとヨーロッパ文明はキリスト教受容による発展が歴史の正道だったとしか考えられない(引用文チェスタトン1)。
その流れに逆らったユリアヌスは、巨視的に見れば、やはり「背教者」の名に値する。
しかし、非常に魅力的で興味深い人物であることには変わりないと今でも思ってはいます。
紙数が少な過ぎる。
ほぼ100ページですからね。
よっぽどマイナーな歴史的人物でない限り、物足りなさが残ってしまう。
初学者の小手調べとして利用するのならいいのかも。
興味のある人物の巻なら、手に取ってもいいでしょう。